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AIエージェントを業務につなげる ― Claude Code 体験ワークショップ(全2回)レポート

AIエージェントを業務につなげる ― Claude Code 体験ワークショップ(全2回)

開催概要

  • 日時  第1回:2026年6月30日 / 第2回:2026年7月7日
  • 会場  NTTファシリティーズ 本社
  • 講師  右田 優希(株式会社Andeco 技術責任者/エンジニア)
  • 主催  NTTファシリティーズ
  • 形式  講義 + ハンズオンワークショップ

2026年6月から7月にかけて、「AIエージェントの業務活用」をテーマとした全2回のワークショップが開催された。

前回のセミナーでは、AIエージェント「Manus」を使い、リサーチや資料作成、Webアプリ開発などを体験した。第2弾となる今回は、Anthropic社が提供するClaudeを使用。パソコン内のファイル操作から、外部データの取得、Web上への公開、建物設備や実際の機器との連携まで、より実務に近い活用方法を取り上げた。

講師は前回に引き続き、株式会社Andecoの技術責任者兼エンジニア・右田優希氏。建設、施設運営、システム開発の現場でAndecoが実際に取り組んでいる事例を交えながら、講義とハンズオンが進められた。

[右田氏]  私たちは一般的なAI研修会社ではなく、建設業の領域で実際にシステムを作り、現場でもAIを使っている会社です。今回は、私たちが実践してきたものを、そのままお伝えしたいと思っています。

前回のセミナーレポートはこちら:「AIエージェントを使ってみよう ― Manus 体験ワークショップ」

Day 1(6月30日)― AIエージェントにパソコン内の作業を任せる

第1回は、LLMとAIエージェントの違いを整理した後、Claudeの「Chat」「Cowork」「Code」という3つのモードを使い、パソコン内の作業をどこまで任せられるのかを体験した。

LLMからAIエージェントへ

LLMは、基本的には入力された文字に対し、学習した情報をもとに文字を返す仕組みだ。

一方、現在のAIサービスには、Web検索、ファイル操作、資料作成、プログラムの実行など、LLMが利用できるさまざまな機能が与えられている。

[右田氏]  例えば「会社紹介資料を作ってください」と指示すると、AIは検索をしたり、メモを作ったり、アウトラインを考えたり、スライドを作ったりします。こうした機能を何度も呼び出しながら、自律的に作業できるようになってきたものが、今のAIエージェントだと考えています。

単に質問へ回答するのではなく、目的を達成するために必要な作業を考え、複数の機能を組み合わせて実行する。この点が、従来のLLMとAIエージェントの大きな違いとなる。

Claudeの3つのモード

今回使用したClaudeのデスクトップ版には、「Chat」「Cowork」「Code」の3つのモードが用意されている。

Chatは一般的なチャットAIに近く、文章作成や検索を行う。Coworkは指定したフォルダ内のファイルを読み込み、編集や整理を行える。Claude Codeはさらに自由度が高く、ファイル操作やデータ加工、アプリ作成、外部サービスとの連携などを実行できる。

[右田氏]  Claude Codeという名前なので、コードを書く専用のソフトだと思われがちですが、コーディング以外にも使えます。パソコンの中でできる作業であれば、大体のことができると思っていただいてよいです。

一方、できることが増えるほど、AIが意図しない操作を行う可能性も高くなる。利用者側で、AIに与える権限や操作範囲を管理することが必要となる。

[右田氏]  Claude Codeは一番自由度が高いですが、その分、いろいろなことができてしまいます。自由度と安全性のバランスを考えながら使う必要があります。

ワークショップ① ファイル整理から閲覧アプリの作成へ

最初のワークショップでは、画像、PDF、Excelなどが混在するフォルダをClaude Coworkで整理した。

参加者がファイル整理を指示すると、Claudeはすぐにファイルを移動させるのではなく、「ファイルの種類で分けるか」「案件ごとに分けるか」といった質問を返した。参加者の回答をもとにフォルダを作り、ファイルを分類していった。

このように、AIの作業途中に人が入り、判断を行う仕組みは「Human in the Loop」と呼ばれる。

[右田氏]  AIに完全に自律して動かせるのではなく、途中で人間が意思決定をすることで、より目的に合った作業を進められます。チャットの回答でも、先にAIから質問してもらうと精度が上がります。

続いてClaude Codeを使い、ファイル整理に加えて、整理後のファイルをブラウザ上で閲覧できる簡易Webアプリを作成した。

Coworkではファイル整理までだった作業が、Claude Codeでは「整理した情報をどのように見せるか」というところまで広がった。

積算業務を半自動化する

講義では、Andecoが実際に進めている電気工事の積算業務の半自動化も紹介された。

従来は、設計書に記載された部材名や数量を読み取り、電材商社のシステムで該当商品を検索し、価格を確認して見積もりへ反映していた。設計書と商品データの表記が一致しないことも多く、経験の浅い担当者には時間がかかる作業だった。

現在は、設計書のExcelデータをAIに読み込ませ、部材名から型番を推定し、電材商社のシステムから商品情報や価格を取得する仕組みを構築している。

[右田氏]  設計書に書かれている品名から型番を考え、商社のシステムで検索し、値段を出すという一連の流れができるようになりました。最初は専用の社内アプリとして作っていましたが、今はChatGPTやClaudeからも使える形に変えています。

Skills ― 業務手順をAIに覚えさせる

こうした繰り返し発生する業務を、毎回文章で指示するのは効率が悪い。そこで使用するのが、作業手順やノウハウをまとめて保存する「Skills」である。

Skillsには、AIが従う手順、判断基準、参照するファイル、実行するプログラムなどを登録できる。

ハンズオンでは、Andecoが社内で使用している積算関連のSkillsを参加者の環境へ登録した。さらに、参加者自身が「工事写真台帳を作るSkills」の作成にも取り組んだ。施工後の写真を読み取り、撮影日や工事内容ごとに整理し、写真台帳として出力するものだ。

[右田氏]  社内では、会計ソフトへ入力するSkillsや、積算を行うSkillsなどを作っています。こうした作業をSkillsにすることで、属人化させずにチームへ展開できるのではないかと考えています。

Skillsは、単なる定型作業の自動化だけではない。担当者が持っている作業手順や暗黙知を、組織内で再利用できる形へ変える役割も持つ。

AIが読みやすい形で情報を残す

AIを業務で活用するためには、AIそのものの性能だけでなく、社内情報をどのような形式で保管するかも重要になる。

スキャン画像や複雑なPDFは、AIが一度データを変換してから読み取る必要があり、その過程で情報の欠落や読み間違いが発生する可能性がある。

[右田氏]  マニュアルがPDFや画像になっていると、AIは一度変換してから読むことになります。変換を挟むと精度が落ちるので、できればシンプルなテキストとして取り出せる形で情報をためるのがよいと考えています。

特定のAIサービスにすべての情報を閉じ込めるのではなく、どのAIからでも読み込みやすい形で社内データを残すことが、今後のAI活用の基盤となる。

また、Claude Codeを利用する際は、重要なデータのバックアップを取る、AIが操作できるフォルダを限定する、重要な操作には人の承認を残すといった対策も必要となる。

[右田氏]  慎重にしすぎると業務を効率化できませんが、何でも自由にさせると事故が起こる可能性があります。私たちはクラウドへバックアップを取った後、ローカル環境で作業させ、問題があれば元に戻すような使い方をしています。


Day 2(7月7日)― 外部データ、建物、現実の機器とつなぐ

第2回は、Day1で体験したパソコン内の作業からさらに範囲を広げ、Claude Codeを外部のデータやシステムと連携させた。

[右田氏]  Day1では、基本的にパソコンの中で閉じた操作を行いました。Claude Codeの面白いところは、外部から情報を取得したり、反対に外部へ情報を渡したりできる点にあると思っています。

ワークショップ② APIから情報を取得する

最初のハンズオンでは、複数の公開APIを利用し、東京電力管内の電力使用状況や時間帯別の電力情報、暑さ指数などを取得した。

各APIから返されるデータは、そのままでは数字や文字が並んでいるだけで人には見づらい。そこでClaude Codeに指示を出し、グラフやダッシュボードの形へ加工した。

[右田氏]  各 APIから返ってくる情報は、そのままだと人間には見づらいデータです。Claude Codeを使うことで、グラフやダッシュボードの形へすぐに加工できます。

生成したダッシュボードはパソコン内で閲覧するだけでなく、一時的にWeb上へ公開。発行されたURLをQRコードに変換し、スマートフォンからも画面を確認した。

[右田氏]  外部からデータを取ってきて、パソコンの中で組み立て、もう一度外部へ共有できます。チャットの中だけで作業するAIでは、なかなか難しい領域です。

また、ひとつのAIが処理を行っている間に別のセッションを起動し、複数のダッシュボード作成を並行して進める参加者も見られた。

ワークショップ③ 仮想ビルをAIで操作する

続くワークショップでは、30階建ての仮想ビルを再現したデジタルツイン環境が用意された。

参加者には一人ひとり異なるフロアが割り当てられ、Claude Codeを通じて、照明、空調、換気、ブラインドなどを操作した。

「担当フロアの照明をすべてつけてください」と指示すると、Claude Codeが対象の部屋を特定し、照明を操作。結果は会場前方に表示されたビル全体の画面にも即時に反映された。

[右田氏]  先ほど電力情報を取得したAPIと同じ考え方で、今回は建物を操作できるAPIをAIへ渡しています。AIが対象の部屋を探し、照明や空調を操作します。

さらに、Claude Codeのループ機能を使い、建物の状態を定期的に確認させた。無人の部屋で照明や空調がついていれば停止する、CO2濃度が1,000ppmを超えた部屋では換気を強くするといった条件を設定し、該当する部屋の設備を自動で操作した。

Claude Codeは1分ごとに建物全体を確認し、条件に該当する部屋があれば、自動で設備を操作した。

[右田氏]  「1分おきに繰り返してください」と指示すると、Claudeが定期的に実行する仕事だと認識し、タスクとして登録します。今回は、無人なのに照明や空調がついている部屋や、CO2濃度が高い部屋を確認し、自分で判断して操作しています。

仮想ビルの一部には、会場に設置した実物の温湿度センサーも連携された。仮想空間のデータと現実のセンサー情報を同じ環境で扱うことで、スマートビルや施設管理での活用をイメージできる構成となった。

AIに建物の操作を任せられるか

建物設備をAIが自動で操作するデモは、AIエージェントが現実空間へ働きかける可能性を示すものだった。一方で、すぐに実際の建物を完全自動で制御できるという話ではない。

[右田氏]  現実の建物で、こうした操作までをAIエージェントにすべて委任することは、現時点ではなかなか無いと思います。ただ、データを取得して分析したり、その結果を別のサービスへ連携したりする部分では、AIエージェントはかなり使えるのではないかと思っています。

Andecoでは現在、ホテルの照明や空調を遠隔で操作し、施設運営を省人化するシステムなども提供している。今回のデジタルツインは、そうした現実のシステムに近い環境を、参加者が自由に試せる形で再現したものだ。

AIとレシートプリンターをつなぐ

講義では、Claude Codeと実物のレシートプリンターをつないだデモも行われた。

「明日の天気をレシートで印刷してください」と指示すると、Claude Codeは天気情報を取得。レシートプリンターを操作するためのスキルを確認し、印刷用データを作成してプリンターへ送信した。

[右田氏]  これは本当に何に使うのかという感じではありますが、AIが現実に干渉してくると面白いと思っています。指示を出したら、勝手にレシートが出てくるというデモです。

ユーモアを交えた実験的なデモではあるが、APIやSkillsを利用すれば、AIがパソコンの外にある機器も操作できることが示された。

※写真は、天気情報の印刷とは別に実施した、AIの利用料をレシート形式で出力するデモの様子。


ディスカッション ― AIが作業する時代に、人は何をするのか

ハンズオン後のディスカッションでは、AIの性能だけでなく、人の役割や専門家の仕事がどのように変化するのかについて意見が交わされた。

Q.  完璧なプロンプトを書く必要はあるのか?

右田氏は普段、アプリを作る際に、必要な要件が固まるまでAIから質問させるスキルを使用しているという。最初から長く、精密なプロンプトを書くのではなく、AIと会話しながら条件を整理していく方法だ。

[右田氏]  AIから質問を返してもらい、それに答えていくと、ユーザーが何を作りたいのかをAIが特定してくれます。プロンプト自体の精度は、以前ほど必要ではなくなってきているのではないかと思います。

ただし、指示が抽象的すぎると、AIが考える時間や質問の回数が増える。目的や前提条件を整理すること自体は、今後も人に求められる。

Q.  営業や技術者の仕事はどう変わるのか?

アプリやシステムの試作品であれば、専門のエンジニアでなくても、AIに質問しながら作れる場面が増えている。右田氏は、Andecoの営業活動も変わっていく可能性があると話した。

[右田氏]  今は営業と技術者がセットでお客様のところへ行っていますが、今後は営業担当者がAIに聞きながらある程度要件を詰め、お客様と話をした上で、必要なところだけ技術者が入る形になっていくかもしれません。

専門家が不要になるということではない。AIが作った成果物の妥当性を判断し、責任を持って採用するかを決める役割は、引き続き人に残る。

Q.  AIが作ったものをAIに確認させることはできるか?

ソフトウェア開発では、Claudeが作成したプログラムを、OpenAIのCodexなど別のAIへ渡し、レビューさせる方法も紹介された。

[右田氏]  Claudeにも書き方の癖があり、特定のバグを繰り返すことがあります。別のAIモデルにレビューさせると見つかる場合があるので、実務でもClaudeが書いたコードをCodexに確認させています。

ひとつのAIだけで作成から確認までを完結させるのではなく、複数のAIに異なる役割を持たせ、人が全体を管理する使い方も始まっている。

Q.  建築図面をAIに読ませることはできるか?

参加者からは、図面の読み取りやチェックにAIを使えるかという質問も上がった。右田氏は、現時点で汎用的なAIに図面を正確に読ませることには慎重な見方を示した。

[右田氏]  現状では、プロンプトだけで図面を読ませる使い方は、私はあまりしたくありません。図面は全体の一貫性を見ながら読む必要がありますが、現在のAIは画像を分割して処理するため、技術の仕組み自体が図面の読み取りに向いていない部分があります。

特に紙をスキャンした画像形式の図面は、線の重なり、記号、線種、縮尺などを判断する必要があり、AIにとって難易度が高い。一方、BIMやIFCのように建物情報が構造化されているデータであれば、AIと組み合わせられる可能性は高くなる。

AIに何でも読ませるのではなく、AIが扱いやすいデータと、専用の図面処理技術を組み合わせることが現実的な方法となる。


2日間を通じて ― AIエージェント活用のポイント

今回のワークショップでは、AIエージェントの活用範囲を段階的に広げていった。

Day1では、パソコン内のファイル整理、データ加工、アプリ作成、業務手順のSkills化を体験。Day2では、外部のAPIからデータを取得し、ダッシュボードとして可視化した。さらにWeb上への公開、仮想ビルや実物の機器の操作まで進んだ。

今すぐ活用できること

  • ファイルの整理、分類、名称変更
  • Excel、CSVなどのデータ加工
  • 工事写真台帳やレポートの作成
  • APIから取得した情報の可視化
  • 定型業務のSkills化と社内共有
  • AIが作成した成果物の別AIによるレビュー

近い将来に広がる可能性

  • 社内システムとAIエージェントの連携
  • 建物のセンサー情報の収集、分析
  • 照明、空調、換気設備の運用支援
  • ロボットや現実の機器との連携
  • 営業担当者による要件整理や試作品作成
  • 複数のAIが役割分担する業務体制

活用にあたって留意すること

  • AIが扱いやすい形式で社内情報を保存する
  • 特定のAIサービスだけに依存しない
  • AIが操作できる範囲や権限を限定する
  • 元データのバックアップを用意する
  • 重要な判断や操作には人が関与する
  • AIが作成した成果物を専門家が確認する

AIエージェントの進化によって、これまで専門家にしかできなかった作業の一部を、専門外の人でも試せるようになりつつある。

一方で、何を作るのかを決め、結果の良し悪しを判断し、責任を持つ役割は人に残る。

[右田氏]  生成AI単体では、チャットをして終わりです。外部と連携し、建物やロボットとつながるようになると、いろいろな可能性が出てくると考えています。今回のDay1、Day2では、そうした未来を体験としてお伝えしてきました。

今回の2日間は、AIを便利なチャットツールとして使うだけでなく、社内データ、業務システム、建物、現実の機器とつながる新しい作業者として捉える機会となった。


講師:右田 優希(株式会社Andeco 技術責任者/エンジニア) / 主催:NTTファシリティーズ

本レポートに記載の内容は、セミナー開催時点における情報です。AIサービスは進化のスピードが非常に速く、機能・料金・仕様は予告なく変更される場合があります。記載内容は各サービスの性能や安全性を保証するものではありません。

株式会社Andeco 2026年7月