レポートAIエージェントを使ってみよう ― Manus 体験ワークショップ(全2回)
開催概要
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「AIツールはセキュリティの観点からまだ使えない」という状況でも、AIとはいったい何ができるのかを体感してほしい――そんな思いから企画された社内向けAIセミナーが、2026年3月12日と3月19日の2日間にわたり、NTTファシリティーズ新大橋ビルにて開催された。講師は株式会社Andecoのエンジニア・右田優希氏。今回取り上げたのは、Meta社が買収を発表(2025年12月末)し話題となっている新進気鋭のAIエージェント「Manus(マナス)」だ。

Day 1(3月12日)― AIエージェントとは何か、Manusを体験する
第1回は、AIの基礎的な仕組みから始まり、Manusの特徴説明、そして実際に参加者がManusを操作するワークショップという構成で進められた。
AIの3つのレベル:LLM・AIチャットツール・AIエージェントの違い
右田氏はまず、「AI」という言葉が画像生成・動画生成・音声合成・エージェントなど非常に広い概念を指してしまっていることを指摘した上で、今回のセミナーではAIを理解するための整理として「LLM(大規模言語モデル)」と「AIエージェント」を軸に解説した。なお、一般的に利用されているChatGPT・Gemini・CopilotなどのAIチャットサービスは、この両者の中間に位置するものとして捉えられる。
[右田氏] 純粋なLLMは、学習した内容からユーザーの質問に答えることはできますが、最新情報の取得や社内独自データへの回答はできません。これを改善するのが、AIエージェントです。AIエージェントはLLMに機能ブロックを渡してあげることで、ユーザーからの指示を受けたのち、LLM自身が必要に応じてそれらをタスク別に呼び出し、組み合わせて完了させます。
※機能ブロックとは、検索・ファイル操作・外部ツール連携など、LLM単体では実行できない処理を補う機能群を指す。
[右田氏] 例えば「会社紹介資料を作って」と言うと、AIエージェントはまず①情報収集、②アウトライン作成、③素材収集、④資料化、という手順を自分でタスクに分解し、それを順番にこなしていきます。
整理:AIの3つのレベル
- ① LLM単体:学習データに基づいて質問に答えるのみ(テキスト生成)
- ② LLM+機能ブロック(AIチャットサービス):検索・文書作成・ツール連携などを組み合わせて実行(ChatGPT・Copilotなど)
- ③ AIエージェント:タスク自ら分解・管理し、複雑・長期の作業を自律的に実行(Manus)

Manusとは何か ― 仮想パソコンを持つAI
右田氏が今回紹介したManusの最大の特徴は、「クラウド上の仮想パソコンを丸ごと持っている」点だ。他のAIサービスがチャット空間のみを提供するのに対し、ManusはOS上でブラウザを操作したり、ファイルを保存したり、コードを実行したりする自由度が格段に高い。
[右田氏] ManusはClaude・GPT・Geminiのうち最も性能の高いモデルを随時切り替えて使っています。独自のLLMを持つのではなく、インターフェースと機能ブロックの組み合わせで勝負しているサービスです。
Manusの主な機能ブロック
- 画像・動画・音声生成:GoogleのNano Banana Pro /Nano Banana 2による生成
- ブラウザ操作:仮想ブラウザでWebサイトの閲覧・フォーム入力・ログインを自動実行
- ファイル操作:テキスト・PDF・Excel・PowerPointの読み書き・生成
- Wide Reaserch:サブエージェントを並列起動し、複数テーマを同時に調査・まとめ
- アプリ連携:Instagram/Googleカレンダー連携など
- アプリの作成・公開:Webやスマートフォン向けアプリの開発と公開

ワークショップ① リサーチ・資料作成・ブラウザ自動操作
参加者は用意されたパソコンからManusにアクセスし、以下の順で体験を進めた。
- チャットモードでのリサーチ:「日本における建設の市場規模は」というプロンプトを送信。参照元を示しながら回答が返ってくる様子を確認。
- エージェントモードへの切り替え:仮想パソコンが起動し、ブラウザ検索・精読・レポートファイル生成まで自律的に実行。「ファイルとして成果物が残る」点を体感。
- 市場調査ツール(Playbook):「建設業・日本」の市場分析をリクエスト。SWOT分析のフレームワークに沿った分析Webページを自動生成・公開。
- 旅行プランニング(Playbook):「大阪から沖縄3日間、予算1人5万円」の条件で旅行計画ページを自動生成。市場調査と並行して走らせ「複数タスクの並列実行」を体感。
- ブラウザ自動操作:デモサイトへの自動ログイン・会議室予約フォームへの自動入力を体験。RPA的な活用の可能性を確認。
[右田氏] GoogleカレンダーやGmailと連携させれば「メールを読んで会議室を自動予約する」ような自動化も可能です。印刷会社への自動入稿なども実際に業務で使っています。
Skills ― 繰り返し作業を効率化する「指示の再利用」
毎回同じ指示を出すのは非効率なうえ、Manusは課金型のため繰り返し作業のコストが積み上がる。これを解決するのが「Skills(スキルズ)」だ。プロンプトをテキストファイルとして保存・共有し、いつでも呼び出せる仕組みで、定期実行機能と組み合わせることで定型業務の完全自動化が実現できる。
ディスカッション①
Q. AIが自律的に大量に動くようになると、仕事の価値はどう変わるのか?
右田氏は「ホワイトカラーの仕事は比較的早く代替が進むと感じています」と述べる一方、建設・施設管理のようなフィジカルな領域は置き換えに時間がかかると見ている。「コードの生産性はすでに10倍以上になっており、エンジニアもPMとして指示を出す役割へシフトしつつある。この流れは他の職種にも来るだろう」とした。
Q. プロンプトの書き方を覚えることは今後も重要か?
「今のAIは指示が曖昧なら自分から質問してくるようになっています。重要なのは明確に指示を出す習慣そのものであって、特定の定型句を覚えることではなくなってきています」(右田氏)
Q. ManusはどのLLMを使っているのか?自社でLLMを持つことは現実的か?
Claude・GPT・Geminiを状況に応じて使い分け随時切り替えている。LLMをゼロから開発するにはコストが膨大で現実的ではなく、汎用LLMにスキルを渡して業界特化させる手法が主流。「暗黙知を形式知として言語化し、スキルやナレッジとして蓄積していくことが、AIの精度を上げる最も現実的な方法です」と右田氏は述べた。
Day 2(3月19日)― 業務に近い形でアプリを作り、計画を立てる
第2回はワークショップの時間を大幅に増やし、「業務フローに近い体験」をテーマに再設計された。前回アンケートで「実際の業務に近い内容を体験したい」という声が多かったことを受けたものだ。点検・報告→修繕計画→候補地選定という施設管理業務のフローを模した3つのワークショップを連続して行った。

ワークショップ② 点検・不具合報告アプリの作成
今回はユーザーが入力・画像アップロード・データ登録できる「実用的なWebアプリ」を作ることを目標とした。

[指示(プロンプト)] 建物の点検・不具合報告を行うWebアプリを作成してください。入力項目は建物名・場所・内容・緊急度・写真アップロードです。一覧には写真サムネイルと緊急度・ステータスを表示し、現場スタッフが片手で操作しやすいようにボタンや入力欄を大きめに調整してください。
Manusはまず要件を「設計図」として提示し、不明点を確認した上で開発を開始した。途中で「タブで分けてください」などの追加指示を出すことで、作業中でも軌道修正できることを確認。完成したアプリは公開ボタン一つでURLが発行され、参加者間で共有した。
ワークショップ③ 点検データから修繕計画書(Excel)を生成
ワークショップ②で作成した点検アプリのURLをManusに渡し、そのデータをもとに建物ごとの修繕計画書をExcelで作成するタスクを実行した。
- Manusが仮想ブラウザで点検アプリにアクセスし、登録データを読み取ってメモ化
- 国土交通省の関連ガイドラインPDFをWebから取得・読み込み
- 収集した情報をもとにExcel形式の修繕計画書を生成(優先度・コスト試算など)
[右田氏] 社内のファイルサーバーや会計ソフトのデータを直接渡すことも技術的には可能です。うちのカフェでは、レジデータと気象データを組み合わせて売上への影響を分析するといったことを実際に行っています。
ワークショップ④ Wide Researchでデータセンター候補地を比較
「Wide Research」機能で複数の都道府県をデータセンター候補地として比較分析した。同一チャット内で蓄積した情報を参照しながら新たな指示を出せる点もManusの特徴として示された。
[右田氏] Wide Researchは、メインのエージェントが複数のサブエージェントを起動して並列でリサーチを行う機能です。150社を順番に調べるのと150エージェントが同時に調べるのとでは効率がまったく違います。
地震リスク・台風頻度・電力インフラ・土地コストなどの観点から比較したレポートが自動生成された。「出典が間違っていることもあるので、重要な情報は必ず人間が確認する習慣が大切」と右田氏は注意点も添えた。

ディスカッション② BIM×AIの現在地と課題
Q. BIM・IFCデータをAIに読み込ませて活用することはどこまで可能か?
右田氏は自社開発中のシステムを紹介。「設計・BIMモデル構築・レビュー」の3段構成で、自然言語の指示からBIM上の壁・廊下・部屋を自動配置するところまでは実現しているが、分野に精通した人間による成果物にはまだ及ばないと述べた。IFCはテキストに近く読み込み自体は可能だが、ツリー構造が深くなるとAIの処理限界に当たりやすく工夫が必要。
Q. 設計の「良し悪し」をAIに学ばせることはできるか?
「LLMをゼロから再学習させることは現実的ではありません。設計の暗黙知を言語化してスキルやナレッジとして蓄積していくことが、AIの精度を上げる最も現実的な方法です」(右田氏)
Q. 2D CADの図面データをAIでチェックに使えるか?
「2D CADは現状厳しいです。線の重なりや表記揺れなど、人間でも難しい判断をAIに求めることになります。AI活用に適したデータ構造に整えることが今後の大きな課題です」(右田氏)
2日間を通じて ― AIエージェント活用のポイント
今すぐ活用できること
- 調査・リサーチの自動化(市場調査、競合調査、候補地比較など)
- 会議前の情報収集・サマリー資料の自動生成
- 点検・報告フォームなど業務用Webアプリの高速プロトタイピング
- 定型的なWebフォーム操作の自動化(RPA的活用)
近い将来に広がる可能性
- BIM・IFCデータとの連携による設計チェック・積算支援
- スキルズ活用による業務特化型エージェントの社内展開
- テキスト入力以外の、例えばスマートグラス等をを介したよりシームレスな指示出し
- AIエージェント同士の協調による並列作業・品質レビュー
活用にあたって留意すること
- Manusは使った分だけ課金(従量課金制)のため、並列タスクの多用はコスト増につながる
- 生成された情報・出典の正確性は人間が確認する習慣が不可欠
- セキュリティ面では現状エンタープライズ水準には達していない部分があり、データの性質に応じた判断が必要
[右田氏] どのAIツールを使うにせよ、指示の出し方や機能ブロックへの理解は共通して活きます。Manusで体験したことは、CopilotやChatGPTを使う上でも必ず役立ちます。まず触れてみることが一番大切です。
講師:右田 優希(株式会社Andeco エンジニア) / 主催:NTTファシリティーズ
本レポートに記載の内容は、セミナー開催時点(2026年3月)における情報です。AIサービスは進化のスピードが非常に速く、機能・料金・仕様は予告なく変更される場合があります。記載内容は各サービスの性能や機能を保証するものではありません。